賃貸経営の知恵袋

減価償却費とは

減価償却費とは?

建物

建物を代表とする固定資産は、すべての金額を一度に経費として計上することは出来ません。
例えば、利益が出ると見込まれる年度に建物を建てて、その建築費全額を一度に経費計上し、利益を減らそうとする個人や法人があったとします。
これを認めてしまうとどうなるでしょうか?
国は税金を徴収することができなくなり、必要な支出にお金が回らなくなってしまいます。

そこで、その固定資産の種類や構造によって定められた法定耐用年数に従い、毎年一定の減耗分のみ経費計上できることになっています。

土地

土地については減価償却することは出来ません。
時間が経過しても劣化しないものは非減価償却資産と呼ばれ、減価償却の対象とはなりません。
経費計上することなく、資産として保有することになります。

個人と法人の違い

個人の減価償却

個人の場合、毎年限度額いっぱいまで償却しなければなりません。
これを強制償却と呼びます。

法人の減価償却

法人の場合、その年度の償却可能限度額の範囲で、償却額を自由に調整することが出来ます。これを任意償却と呼びます。
減価償却額を0で計上することも可能です。

その期に計上しなかった償却分を翌期に計上することは出来ません。
未償却分は、償却期間が経過した後に計上することが出来ます。
例えば、償却期間が15年、1年分の償却額が簿価に残っていた場合、16年目以降で利益が上がった期に合わせて計上することも可能です。
結果的に計上しないまま売却に至った場合は、売却益から残っていた償却額を差し引くことになります。

よって個人よりも、償却額を調整できる分法人の方が有利であると言えます。

2つの減価償却方法

減価償却の方法には、定額法と定率法の2種類があります。
減価償却は、定額法・定率法のいずれかを選択することになります。

平成10年4月1日以降に取得した建物本体は、定額法しか選択出来ません。
平成28年4月1日以降に取得した建物付属設備(電気・給排水・エレベータなど)と構築物(塀・門など)も、定額法しか選択出来なくなりました。
今後、新築を建築した場合や中古物件を取得した場合は、必ず定額法を選択することになります。

上記以前から不動産を所有している方もいるでしょうから、定額法と定率法それぞれについて解説します。

定額法

定額法は、毎年一定額を償却することが出来ます。
つまり、定額法は減価償却費が毎年同額になります。

【計算方法】

取得価格×定額法償却率=年間の減価償却可能額

【例】
取得価格 100万円
耐用年数 8年
償却率 0.125

購入 減価償却費 減価償却累計額 期末帳簿価格
1年目 100万円×0.125=125,000 125,000 875,000
2年目 100万円×0.125=125,000 250,000 750,000
3年目 100万円×0.125=125,000 375,000 625,000
4年目 100万円×0.125=125,000 500,000 500,000
5年目 100万円×0.125=125,000 625,000 375,000
6年目 100万円×0.125=125,000 750,000 250,000
7年目 100万円×0.125=125,000 875,000 125,000
8年目 100万円×0.125−1=124,999 999,999 1

この表を見てわかる通り、耐用年数の最終年度は本来の減価償却費から1円を引いた金額を計上します。
減価償却が終了した資産は、残高1円として帳簿に残しておくことになります。
この残しておく1円を備忘価格と呼びます。
1円を残しておくことで、減価償却を終えた固定資産として記録を残しておきます。
また、建物や建物附属設備などの有形固定資産では1円の備忘価格を残しますが、ソフトウエアなどの無形固定資産については1円を残す必要はありません

定率法

定率法は、毎年一定割合を償却することが出来ます。
定率法では、減価償却費が初めの年ほど多く、経年とともに減少することになります。

また、減価償却資産を取得した時期によって適用される償却方法が変わります。
平成19年4月1日〜平成24年3月31日・・・250%定率法
平成24年4月1日以後・・・200%定率法

【計算方法】

(算式1)
未償却残高×定率法償却率=年間の減価償却費可能額
(算式2)
調整前償却額が償却保証額に満たない場合の定率法の償却限度額
=改定取得価格×改定償却率

200%定率法

【例】
取得年月日 平成24年4月1日
取得価格 100万円
耐用年数 8年
償却率 0.250
改定償却率 0.334
保証率 0.07909(償却保証額79,090円)

購入 減価償却費 減価償却累計額 期末帳簿価格
1年目 1,000,000×0.250=250,000 250,000 750,000
2年目 750,000×0.250=187,500 437,500 562,500
3年目 562,500×0.250=140,625 578,125 421,875
4年目 421,875×0.250=105,468 683,593 316,407
5年目 316,407×0.250=79,101 762,694 237,306
6年目 237,306×0.250=56,326
56,326<償却保証額79,090
のため
237,306×0.334=79,260
841,954 158,046
7年目 237,306×0.334=79,260 921,214 78,786
8年目 237,306×0.334=79,260
償却しきれないので
期末未償却残高−1=78,785
999,999 1

250%定率法

【例】
取得年月日 平成19年4月1日
取得価格 100万円
耐用年数 8年
償却率 0.313
改定償却率 0.334
保証率 0.05111(償却保証額51,110円)

購入 減価償却費 減価償却累計額 期末帳簿価格
1年目 1,000,000×0.313=313,000 313,000 687,000
2年目 687,000×0.313=215,031 528,031 471,969
3年目 471,969×0.313=147,726 675,757 324,243
4年目 324,243×0.313=101,488 777,245 222,755
5年目 222,755×0.313=69,722 846,967 153,033
6年目 153,033×0.313=47,899
47,899<償却保証額51,110
のため
153,033×0.334=51,113
898,080 101,920
7年目 153,033×0.334=51,113 949,193 50,807
8年目 153,033×0.334=51,113
償却しきれないので
期末未償却残高−1=50,806 
999,999 1

定額法と定率法の比較

上のグラフを見るとわかる通り、定額法は毎年減価償却費が毎年同額となります。
定率法は、定額法よりも早い時期に多くの減価償却費を計上することができ、年々償却額が減っていきます。
それぞれの特徴を理解することが大切です。

主な法定耐用年数と償却率

建物

構造 耐用年数 定額法の償却率
鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造
47年 0.022
重量鉄骨造
(4mm超)
34年 0.030
軽量鉄骨造
(3mm超4mm以下)
27年 0.038
軽量鉄骨造
(3mm以下)
19年 0.053
木造 22年 0.046

建物附属設備

設備 耐用年数 定額法の償却率 定率法の償却率
給排水・衛生設備・ガス設備 15年 0.067 0.133
エレベーター 17年 0.059 0.118
消化・排煙・災害放置設備 8年 0.125 0.250

中古物件の耐用年数と減価償却の計算方法

法定耐用年数を全て経過している場合

法定耐用年数×20%
の期間で減価償却します。
1年未満の端数は切り捨てとなります。

【例】
築25年の木造アパートを取得した場合

木造の法定耐用年数22年×20%=4.4年・・・減価償却期間4年

法定耐用年数の一部を経過している場合

(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%
の期間で減価償却します。
1年未満の端数は切り捨てとなります。

【例】
築19年の木造アパートを取得した場合

(22年−19年)+19年×20%=6.8年・・・減価償却期間6年

取得価格によって選択できる償却方法

10万円未満の場合

購入した物が10万円未満の場合、消耗品費として一度に経費として計上することができます。

10万円以上20万円未満の場合

10万円以上20万円未満の資産を購入した場合、3つの選択肢があります。

通常の減価償却資産

通常の減価償却資産として、法定耐用年数で償却する方法です。当然ながら償却期間が長く、毎年の経費となる額は小さくなります。

一括償却資産

一括償却資産とした場合、3年間の均等償却となります。
15万円のパソコンを購入した場合、毎年5万円を3年間経費として計上することになります。

少額減価償却資産

中小企業者等が、取得価格が30万円未満である減価償却資産を、平成18年4月1日〜令和2年3月31日までの間に取得などにして事業のように供した場合、取得価格全額を経費として計上することができます。

適用対象法人

この特例の対象となるのは、青色申告法人である中小企業者または農業協同組合などで、常時使用する従業員数が1000人以下である法人に限られます。

また、中小企業者とは次の法人を言います。
⑴ 資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人
⑵ 資本または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1000人以下の法人

適用対象資産

この特例の対象となる資産は、取得価格が30万円未満の減価償却資産です。
ただし、1事業年度に適用できる上限金額は、300万円までとなっています。

20万円以上30万円未満の場合

20万円以上30万円未満の場合、2つの選択肢があります。

通常の減価償却資産

通常の法定耐用年数で償却する方法です。

少額減価償却資産

10万円以上20万円未満の場合で説明した通りです。
例えば、31万円のパソコンを購入すると、通常の減価償却を行わなければなりません。
29万円のパソコンを購入した場合は、この少額減価償却資産としてその年度に一度に経費として計上することができ、大きな違いが出ます。
30万円前後の物を購入する際は、この点を注意しましょう。

30万円以上の場合

通常の減価償却資産として取り扱います。

減価償却費は現金支出のない必要経費であり、賃貸経営におけるキャッシュフローに大きく関わる項目となります。
理解しているとしていないでは、大きく結果も変わります。
十分に理解を深めておきましょう。