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小規模企業共済制度の概要
小規模企業共済制度は、その名の通り小規模な会社の経営者や役員が、廃業や退職時の生活資金などを積み立てるために作られた制度です。
将来事業を廃業したり、法人の役員を退任した際に、その後の生活資金として共済金を受け取ることになります。
賃貸経営者の多くが、節税や積み立てを目的に加入している制度です。
加入するメリット
会社の税金が節税できる
共済制度は個人で加入する制度になります。
月々の掛け金を5万円とするとします。その掛け金の支払いの分、役員報酬を5万円増額したとしましょう。
会社は役員報酬5万円分の経費が発生するため、法人税等の節税となります。
役員(個人)は掛け金を所得控除できる
一方役員(個人)は、役員報酬5万円分が増額になりますが、小規模企業共済の掛け金は全額所得から控除されるため、所得税等の増額にはなりません。
つまり、個人と法人と合わせて5万円分の所得に対する節税をはかることができます。
貸付制度がある
掛け金の範囲内で貸付制度があり、いざ現金不足になった場合に利用できます。
貸付制度には、以下のような種類があります。
①一般貸付制度
②傷病災害時貸付け
③創業転業時・新規事業展開等貸付け
④廃業準備貸付け
⑤緊急経営安定貸付け
⑥福祉対応貸付け
⑦事業承継貸付け
以下の貸付制度の説明は、上記①の一般貸付制度についてです。
借入の限度額
掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、10万円以上2,000万円以内(5万円単位)で借入れをすることができます。
借入期間
100万円以下 : 6か月、12か月
105万円~300万円 : 6か月、12か月、24か月
305万円~500万円 : 6か月、12か月、24か月、36か月
505万円以上 : 6か月、12か月、24か月、36か月、60か月
返済方法
借入期間が6か月または12か月の場合 : 期限一括償還
借入期間が24か月、36か月、60か月の場合 : 6か月ごとの元金均等割賦償還
金利
年1.5%
加入条件
小規模企業共済制度には、次のいずれかに該当する場合に加入することができます。
①建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
②商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
③事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
④常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
⑤常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
⑥上記「1」と「2」に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)
サラリーマン大家さんのように、アパート経営等の事業を兼業している給与所得者(法人または個人事業主と常時雇用関係にある方)は、小規模企業共済制度への加入は認められません。
掛け金
掛金月額は、1,000円から7万円までの範囲内(500円単位)で自由に選択できます。
毎月の掛金は、個人の預金口座からの振替による払込みとなります。
振替日は、毎月18日(18日が休日の場合は翌営業日)です。
掛金の納付方法は、月払い、半年払い、年払いから選択できます。
加入シミュレーション
以下の条件で加入した場合に、幾ら受け取ることになり、幾らの節税につながるのか確認してみましょう。
(細かな条件は省いていますので、あくまで概算です。)
加入条件
加入期間:2019年6月〜2039年5月の20年間
月々掛金:5万円
課税所得:500万円
シミュレーション結果
受け取れる共済金額
事業廃止などの場合:13,932,000円
老齢給付などの場合:13,294,000円
節税効果
税額 | 所得税 | 住民税 | 計 |
加入前 | 584,500円 | 505,000円 | 1,089,500円 |
加入後 | 462,000円 | 445,000円 | 907,000円 |
節税額:182,500円
実質返戻率
実質返戻率とは
受け取ることになる共済金額÷(掛金合計額−節税総額)
ざっくり言うと、100%を超えた部分について得をしたことになります。
事業廃止などの場合:167%
老齢給付などの場合:159%
このシミュレーションはこちらのページで行うことができます。
賃貸経営は将来への積み立てが大切です。
節税を図りながら積み立てができる小規模企業共済制度は、とても有効な手段の一つです。